こまつ座:(井上ひさし・ 「the 座」創刊号より・ 84 年 4 月) 「the座」創刊号(84年4月)より
 

英語の定冠詞の“ the
(ザ)”に一座の“座”」

座という字の成り立ちは、屋根があって、人が二人以上いて、その下に土がある。こまつ座の劇場を持つという夢の実現にあたって、まずは紙の劇場として「 the 座」がスタートした。
 


 
 

      
 
 

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第15号:人間合格
 

前口上 井上ひさし

では、太宰とは、どんな人物か。事実だけをとりあげ、それも三人以上の人がいっている特徴を列挙してみますと、次のようなことがわかります。/酒が強くて、いわゆる一升酒。近眼。歩くのが好きな人。太宰病身説というのがありますが、これはウソです。そんなに歩ける人が病気であるはずがない。(略)作品の中で自分は醜男で、いつも恥ずかしい思いをしていたなんて書いていますが、大ウソです。いったい太宰という人は、都合の悪いことは絶対に書かない人なんです。ですから、津島修治という東大の学生が左翼運動にどのていど加担したかも、いっさい謎です。兄さんのことも書きません。書くとするとすごく兄さんによく書く。兄さんが読んでも怒らないように書いています。ですから、このあたりが太宰を解く第一の鍵ではないかと思うのです。/津島家というのは、明治以前はたいした家ではなかった。ちょっとした地主にすぎない。これが凶作のたびに困った百姓たちに金を貸し、返せない人たちから土地をとりあげ、どんどん大きくなっていた新興大地主です。/そんな家から月120円の仕送りを受けている太宰。当時、東北で貧しさゆえに娘さんが遊郭へ身売りされるお金が120円。/自分は滅びる階級である。滅ぼされる運命にあると思い、家に反抗しますが、その実、家が大好きな太宰。女にすぐ死にたい、殺してくれという太宰。/現在のわれわれは、最後は太宰の作品に戻って、太宰の仕掛けた罠-うそだかほんとだかわからない、調べれば調べるほどわからなくなるという-そうした罠にわざとはまって、彼の小説と実生活をまるごと享受しながら、彼の理想としていた愛や友情や正義のあり方について考えてみるという方が正しいのかもしれません。

特集:太宰治

●金木 ●津島家の人びと ●幼年時代 ●金木第一尋常小学校・明治高等小学校 ●県立青森中学校・官立弘前高校 ●東京帝国大学入学 ●鎌倉・心中 ●東京・転々 ●船橋 ●手紙 ●甲府・結婚 ●三鷹 ●津軽 ●三鷹 ●熱海 ●玉川入水

●特別対談 太宰治という人 井伏鱒二vs長部日出雄

●特別再録 座談会 太宰治/坂口安吾/織田作之助

●the座インタビュー 相馬正一 

座談会●演出家の仕事。批評の眼

<出席>鵜山仁、大笹吉雄、小田島雄志、扇田昭彦、渡辺保 (司会)小田豊二

『人間合格』人びと劇場

風間杜夫(津島修治)
「傷つきやすい役者人生。顔は剽軽、心はぐちゃぐちゃ」

すまけい(中北芳吉)
「その瞬間に人生がかかっている。本気になってはずかしい」

辻萬長(佐藤浩蔵)
「太宰さんの本は読まない。台本だけを素材に演じる」

原康義(山田定一)
「役者はみんなライバル。先輩と共演するチャンス」

中村たつ(青木ふみ)
「一人何役?それぞれの存在感。太宰の女性像を求めて」

岡本麗(チェリー旗)
「不安と期待が入り乱れて。台詞の一字一句を大切に」

お問合わせはこまつ座出版部まで
03-3851-6180
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